大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和26(れ)1091 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

被告人の上告趣意は末尾添付の上告趣意書記載のとおりである。

しかし、憲法第二五条第一項は国家は国民一般に対し概括的に健康で文化的な最

低限度の生活を営ましめる責務を負担し、これを国政上の任務とすべきであるとの

趣旨であつて、この規定により直接に個々の国民は国家に対し現実的にかかる権利

を有するものではないのであるから、被告人が所論のように最低生活を維持するた

めに本件犯罪を犯すに至つたものであるとしても、その犯行が憲法第二五条第一項

によつて正当化され、科刑を免れ得るものではない。(昭和二三年(れ)第二〇五

号、同年九月二九日大法廷判決参照)また、憲法第三六条にいわゆる「残虐な刑罰」

とは、人道上残酷と認められる刑罰という意味であつて、裁判所が普通の刑を法律

において許された範囲で量定した場合においては、それが被告人の側からみて過酷

と思われるものであつても、憲法にいわゆる残虐な刑罰にあたらない。(昭和二二

年(れ)第三二三号、同二三年六月二三日大法廷判決)従つて論旨はすべて理由が

ない。

よつて旧刑訴四四六条により、裁判官全員一致の意見を以て主文のとおり判決す

る。

検察官 田中巳代治関与

昭和二六年九月一八日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

- 1 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!